原子力安全・保安院。この糞みたいな組織!

 経済産業省に原子力安全・保安院という組織がある。そのホームページには、この組織の役割が次のように書かれている。

原子力安全・保安院は、国民生活や産業活動に欠かせないエネルギー施設や産業活動の安全確保を使命とする組織です。事故・トラブルの未然防止、万一の事故への迅速で的確な対応、事故の再発防止に徹底的に取り組みます。

 エネルギー施設には当然、原子力発電所も含まれる。ホームページのトップに原子力の安全という項目が掲げてある。しかし、その原子力安全・保安院が原子力の安全を妨害するような活動を行っていたとしたら。そして、その責任者がのうのうと偉い人として君臨していたら。そのまさか、が日本の現実なのである。

 2006年に原発事故の防災指針を国際基準に合わせて改定しようとした内閣府原子力安全委員会に対し、原子力安全・保安院が「国民不安を増大する」などと反対した問題である。以下は、日経新聞からの抜粋。

 防災指針の見直しは、国際原子力機関(IAEA)の改定案に合わせ、06年3月に安全委員会が開始。半径8〜10キロメートル圏内とした原子力発電所の 「防災対策重点地域(EPZ)」を、半径30キロメートル圏内の「緊急時防護措置準備区域(UPZ)」に拡大し、事故時に即時避難する区域を半径5キロ メートル圏内に設けることを検討した。
 保安院は同年4月の文書で、(1)住民に居住地などの移転を考えさせることになる(2)従来の説明を変えると国民の不安感が増す(3)防災資機材を整備する地域が広がり財政的支援が増える――などと指摘。「原子力安全に対する国民不安を増大するおそ れがあるため、本件の検討を凍結していただきたい」と求めた。
 安全委は「国民に対する説明責任の観点から不可欠」と改定を進める考えを示したが、保安院は「意味不明であり、とうてい理解しがたい」と文書で抗議。メールでも「何ら新しい措置を伴うことを指針に盛り込まない」ことを条件に、改定は字句修正にとどめるよう要請。「委員への根回しによって、そのような結論に導くことが必要です」とした。
 防災指針は07年に改定されたが、UPZなどの導入は見送られた。福島原発事故後に安全委は再改定に着手し、避難地域の拡大などを月内に決める方針だ。

 3月17日朝日新聞3面には、この問題で当時の広瀬研吉院長(現経済産業省特別顧問)が自ら、安全委員に「寝た子を起こすな」と反対していたということが書かれている。さらに保安院は、安全委事務局に「立地地域に不安を惹起し、混乱を来す」など、反対する文書を送り続け、結果的に導入は見送られたという。

 原子力の安全を確保するのが使命の役所が、そのトップ自らが先頭に立って原子力の安全確保を妨害する活動を平気で行う。なんという国なんだろう日本は。そもそも原子力を推進する役所の中に原子力を規制する役所を置くのは非合理であるという指摘は何十年も前からあったにもかかわらず、それを改善できない日本。小学生が考えても非合理的と分かることを何十年も改善できない日本。本当に全く自浄能力の無い国である。

 さらにそのトップであった広瀬研吉という人物は、現在、経済産業省の特別顧問。本当に悪人に優しい国である。国会議員を含めた上級の国家公務員の不正や非倫理的行いは、期限を設けず永久に責任を問うべきである。そうしないと腐った役人どもの悪さはいつまで経っても無くならないであろう。

 AIJ投資顧問が、中小の年金基金から預かっていた約2000億円が消失した問題では、企業年金基金に天下りした旧社会保険庁幹部がAIJを勧めたことが指摘されている。天下りであっても自分がやったことの責任は取るべきである。しかし、現実は、天下りした旧社保庁幹部たちはペロッと舌を出して、頭を掻きながら、全く反省することもなく、たっぷり自分の退職金をもらって次の天下り先へ行くのであろう。めでたし、めでたしか。馬鹿をみるのはいつも下っ端庶民のみ。

(2012年3月18日 記)

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